「レベル5よ、シャッターが上がるわ」
美緒が叫んだ。鉛色をしたシャッターがゆっくりと上がっていく。同時に建物の壁についている窓と思われる部分のシャッターも動き始めた。これも、ゆっくりとした動きだ。きっとこの動きに同調するように「民宿愛想村」の建物は地下に沈んでいっているに違いない。と、屋根の部分にも変化が感じられた。見上げると、ドーム型の屋根が、ちょうど天文台の屋根のように真ん中から二方向に向かって割れ始めた。屋根からは明かりは漏れてこなかった。
正面入口のシャッターは殆ど上がって、入口にある透明の自動ドアが見えてきた。五人は入口に駆け寄った。と同時に自動ドアが開き、中から白い防護服に身を包んだ男が三人現れた。両側の男たちはM16自動ライフルを携えていた。自衛隊だろうか。真ん中の男が五人の前まで歩み出た。両脇の男二人は入口の左右に分かれて立った。
「困りますな、沢田さん。ここは立ち入り禁止なんですワ」
沢田にも岩井にもその声は聞き覚えがあった。ついさっきまで話していた相手、組合長の声だった。
「お前たち三人は、センターに来るように連絡したはずだが」
「ここに、お父さんがいるって本当なんですか」
「美緒、お前の父親は私だろ」
「ここに本当のお父さんがいるって、お母さんが」
「馬鹿め。お前たち三人は、私が創ったんだ。美緒、お前には本当の父親などいない。ここにいるのは、サンプルなんだ。それに、お前たちもそうだ」
「なぜ、私たちを創ったんですか」
「なぜだと、増殖実験に決まってるだろうが。プルトニウムは増殖する。女も増殖する。それを確かめるためには実験が必要なんだ。お前たちは、コピーだ。純粋のコピーだ。」
「私はコピーなんかじゃない」
「美緒、どうやら、私の失敗だったようだな。お前だけは初期情報をインプリンティングしないでおいたのが。連れて行け」
組合長は後ろを振り向いて二人の男に命じた。二人の男は五人の背後に回りながら、建物の中に入るようにM16で指し示した。
「B1、B2はセンターへ」
「分かりました、リーダー」
すれ違い様に組合長が声を掛けると、美旺と美央が返事した。
建物の中は薄暗い照明が中央の放射状に延びた通路を浮かび上がらせている。通路の中心には目の高さくらいの円柱形の台があり、金網で回りを覆ってある。通路は六本が確認できた。通路の両側は部屋になっているらしく、数メートルおきにドアがついていた。もっとよく見ようとしたが、沢田の腕を取って組合長がエレベーターに乗るように促した。エレベーターには階数を表示するものは何もついていなかったが、感じからすると、地下四、五階の深さに思えた。
エレベーターが止まってドアが開くと、透明のビニールでできた通路があった。通路はエアシャワーのようだった。通路を抜けると目の前にムービングウォークが延びていた。ムービングウォークはしばらく行くと、二方向に分かれていた。左は「センター」、真っ直ぐ行くと「コントロール」という表示がしてあった。美旺と美央は左に行くムービングウォークに乗り換えた。沢田と岩井と美緒は組合長の指示で真っ直ぐ延びているムービングウォークに乗った。ムービングウォークが途切れると、エレベーターがあった。エレベーターでまた地下数階を下った。エレベーターのドアが開くと小部屋になっていて、そこで防護服を脱ぐように組合長が三人に指示した。M16を持った二人は防護服を脱がずに組合長に敬礼するとまた、エレベーターで上がっていった。
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