--- 「夢の続きは、もうない」 ---



打ち水をした石畳の向こうの格子戸を開けると、そこは夢の世界であった。

喧騒の夜があり、静寂の夜があり、笑いがあり、涙もあった。
ほんの気まぐれから始めた店であったので、ほんの気まぐれでやめた。

1999年12月31日、ミレニアムパーティをしたのが最後だった。この夜、お客が持ってきた1900年ものの赤ワインを抜いたのを覚えている。

7種のロマネコンティをすべてグラスで飲ませ、すし屋に出張させて握らせてワインとあわせたり、イタリアン、フレンチのシェフとのマリアージュ対決をしたりと、馬鹿なことを本当にやりつくした。

もう、2度と店をやることはないと思う。「ワインパブ 夢屋」は、今はもう幻の店である。