続・夜のソムリエ
--- 第二話 ブルゴーニュ(二) ---

午後六時半、松田部長、林田課長、大森係長の三人がまず顔を見せた。しかし、他店の開店であってももう少し長くいるのではないかと思うほどの時間でさっさと切り上げて帰っていった。

入れ替わりに、早速お客様第一号が顔を見せた。喫茶店の客で、昼間、レジ横に置いてあったDMはがきを見てきてくれたのだという。

この喫茶店は、オフィス街にあることからモノトーンのしゃれた造りになっており、店の女の子の制服もモノトーンで統一していることから、客にもオシャレな人たちが少なからずいた。

しかし、営業をやっていたことがあるとはいえ、三年間を香港で過ごし戻ってきた田中にとっては、 急に店をやるからといって来てくれる客のいようはずがなく、DMはがきを置いてくれたマネージャーの好意はありがたかった。

第一号の客としばらく過ごすうちに、DMはがきを受け取ったメンバーが集まり始めた。 下の坊の女将、千夜のマダム、ベルサイユのママ、味覚寺の住職、DMを作ってくれたつっちゃん、業界関係者に混じって社長も顔を見せてくれた。

「田中君、どうや、上手いこといきそうやないか?こないに簡単に店が出来るとは思わなんだわ。なー、どないや、皆」

「いやー、こないなことで上手いこといくんでしたら、見習わなあきまへんなー」

社長は業界関係者に取り囲まれ、お気楽なもので、まるで自分のアイデアであるかのように自慢して回っている。

そこへビルのオーナーが顔を出してくれた。こちらは会社の若い女子社員を連れて来てくれたのだ。

「いや、おめでとう。店長の方とうまいこと話しおうて、喧嘩せんようにあんじょうやってや」

「はい。どうもありがとうございます。ご迷惑にならないように気をつけたいと思います」

「ほなわしはこれで、うちの子たちにも何か飲ましたって」

丸顔で赤ら顔のビルのオーナーは、そういってドアを開けるとエレベーターホールの方に向かった。ビルの最上階を住まいにしているという話だった。

店内は突然混み合ってきた。すぐに九席しかないカウンターが一杯になり、テーブル席の方にまで客が上がっていく。この喫茶店は、入って左手に黒みかげで出来た低いカウンターがあり、テーブル席は、カウンターの奥に階段で高さをつけた踊り場に数個並んでいる。椅子・テーブルは黒で統一してあり、天井の高いアールデコ風の白壁になっている。