麹菌と酵母は清酒造りを担う二つの重要な微生物です。この二つは分類学上近い関係にありますが、全く異なるものです。 麹菌は分生胞子をたくさんつけ、この胞子が酵母と似ているので、はじめは麹菌が変化し、酵母になるものと考えられていました。しかし、1895年、矢部規矩冶博士らによって清酒酵母の存在が明らかにされました。 清酒造りの役割からいっても、麹菌は蒸米を溶かしてブドウ糖を生ずるための酵素を生産し、酵母はそのブドウ糖を発酵してアルコールを生ずる働きをします。また、酵素と酵母も全く異質なもので、酵母は微生物で生き物ですが、酵素は生体触媒の働きを持つ単なるタンパク質です。