食品加工に働く主な微生物
地球上には様々な微生物が存在しているが、多くは房異な単細胞からなるもので、顕微鏡を使って観察することができる。 これらの微生物は、土壌、河川、海洋、大気などに広く生息し、中には、石油、高温の温泉、生体内といった特殊な場にのみ特異的に生息する変わり者もいる。 微生物は色々な物質を摂取し、代謝しているが、微生物のこれらの特性を食品加工に利用することができる。
それでは、この中から食品の加工に用いられる主な微生物を紹介しましょう。
食品名働く微生物 食品名働く微生物
パン酵母(バクテリア) 日本酒黴・酵母(バクテリア)
ビール酵母(バクテリア) 漬け物類バクテリア・酵母
納豆バクテリア くさやバクテリア(酵母)
味噌黴・酵母(バクテリア) 醤油バクテリア(黴・酵母)
バクテリア・酵母 ヨーグルトバクテリア
チーズ黴(酵母・バクテリア) 本格寿司バクテリア
塩辛・魚醤自己消化 鰹節
味醂黴・酵母(バクテリア) ワイン酵母(黴・バクテリア)
焼酎黴・酵母 ウイスキー酵母
ブランデー酵母 中国酒黴・酵母(バクテリア)
テンペ黴・バクテリア ( )内は主役に次ぐ働きをする微生物

微生物の分類表


糸状の菌糸の集合した菌糸体と胞子を着生する子実体によりなる。成長したものは肉眼でも本体を確認できる。ケカビ、クモノスカビ、ベニコウジカビ、アカパンカビ、コウジカビ、アオカビ等がある。もっともポピュラーな働きは澱粉の糖化である。食べ物ではないが医薬(とくに抗生物質)の生産にもなかなかの働きをしている。日本で麹製造に用いられる通称「コウジカビ」は、アスペルギルス属の黴である。

酵母
出芽、または分裂により増殖する単細胞微生物。球卵、楕円、ソーセージ状と形はさまざまである。サイズは3〜6*7〜10ミクロン(1ミクロンは1000/1ミリメートル)と微細。もっともポピュラーな働きは糖をエタノール(アルコール)にすることで、醸造物(酒)製造の主役である。

バクテリア
分裂により増殖する。幅1ミクロン以下。最下等生物に位置し食品加工に多彩な役割をはたす。酢、漬け物、納豆、くさや等を作り出す主役である。ただし有害な病原菌も多い。

微生物は、人間に有益な種々の発酵産物を造ってくれるが、有害な腐敗現象も微生物の仕業である。しかし、人間に有益な働きをする微生物は、人間に有害な働きをして食物を腐敗させる有害微生物からの攻勢から、大事な食物が腐敗しないように守る働きもしてくれる。有益菌の濃厚液に浸したり、濃厚な発酵産物で包み込むことによって、腐敗を防いで日持ちの良い、そして風味を増した保存食を得ることができる。 野菜、魚、肉等を、漬け物や粕漬けにしたり、味噌漬け、溜まり漬け、酒漬けにするなど、微生物の働きを利用した食物の保存性の向上と優れた風味づけは各地で行われており、独特の風味を持つくさやは、濃厚な有効菌液に魚を漬けて得られる優れた保存食である。
微生物の発酵産物であるアルコールは、食物の変質・腐敗の防止にきわめて有効であることは良く知られている。アルコールに限らず、微生物の発酵産物は、概して微生物の増殖を抑制したり、食物を微生物から防御したりする働きを見せることが多い。