松チャンのお話バックナンバー


松チャンのお話
  • 第1回/山を守る炭焼職人

    ●短命なウバメガシ
     この地球上に住む生物、生命体には寿命があり、与えられた寿命を全うすると人間であれば死に、植物であれば枯れてしまいます。人間に比べ樹木の寿命ははるかに長いとされていますが「ウバメガシ」はせいぜい100年〜150年と他の樹木に比べ短命です。備長炭の歴史は1200年にも及びますから、よく「ウバメガシ」の原木が絶えなかったものだと疑問に思われる方も多いことでしょう。
     備長炭の原料になるウバメガシの樹齢は25年から30年が最適だといわれています。これだけ若い樹齢で伐採しつづければ、県内に生育するウバメガシは100年ともたないように思えます。

    ●人との共存が守ってきたウバメガシの森
     ではなぜ1200年もの間ウバメガシが絶滅しなかったのでしょうか。
     その理由は、一旦伐採すると新たに種や苗木を植えないかぎり再生しない松などの針葉樹林に対し「ウバメガシ」を始めとする日本の多くの天然林は自ら再生能力を持っていたからなのです。特に樹齢20年〜30年の若い原木は再生能力が盛んで伐採しても切り株から若い芽を一斉に発生させます。しかし人間と同じように高齢化した原木は伐採されると一端は芽をだすが、充分育たずに枯れてしまいます。
     これでお分かりでしょう。じつはその昔から炭焼き職人達が「ウバメガシ」を適齢期に適度に伐採することがその力強い再生能力を引き出すことに他ならなかったのです。これはまさに大自然と人との共存共栄を果たしてきたといえます。先人達はすばらしい知恵と技術によりこの人と自然の共存の森を育んできたのです。

    ●共存の森を未来へと伝えるために
     ところが近年になって心ない一部の地域ではこの共存関係のなかで守られてきたはずの「ウバメガシ」が不足してきています。実は以前は他の天然林も白炭の原料として適度に伐採されていたのが、最近の備長炭人気で「ウバメガシ」しか伐採されず、他の原木は未放置状態のままにしてしまっているのです。そしてそういった地域では山の生態系がくずれ、「ウバメガシ」の生育を妨害する結果になっています。
     共存の森という千年以上も続いた特別な環境を持つわたしたちのとるべき手段は天然林を適度に伐採し、その原木を製炭技術などによって有効活用のできる素材に変えることで、これからも永い間これらの森を死滅させることなく未来へと継承していかなければならないと思います。

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