松チャンコーナー

皆さん、こんにちは。私がこのホームページのご案内役の松本です。「松チャン」と呼んでください。 これから私が、このコーナーで備長炭にまつわるオモシロ話、南部川のトピックスなど、いろんな話をしてまいりますので乞うご期待下さい。あっ、それから、ご意見ご感想、お叱りからファンレターまでなんでも歓迎します。どしどしお寄せください、ネ。
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松チャンのお話
  • 第5回/ 「炭琴物語完結編」

    1996年3月10日、いよいよ炭琴CDスタジオ録音本番当日を迎えました。 思い起こせば幾多もの苦難があり、本当にこの日が迎えられるのかすごく不安になっ たこともありましたが、無事に何とかここまで来る事が出来ました。

    スタジオは東京の新大久保、開始時間は13:00より行われ私も飛行機で上京すること になりました。 私がスタジオへ入ったのが時間より少し遅れたものだから、炭琴はすでにセットされ リハーサルが進められていました。 その時スタッフの方からは「松本さんが早く来てくれないから炭琴の組立式台の作り 方が分からなくて、自分たちで適当に作っては見たんだけど、随分あわてましたよ。 」との言葉。 しまった、前日から来てあげていたら良かったな、とも思いましたが炭琴台は設計通 りうまく完成されており、吉川先生によって軽やかな演奏が始められていました。 最初はうまく進んでいるかのように思えて安心して見せていただいていたのですが、 それもつかの間。 思いもかけないハプニングがこの後続出してきたのです。

    南部川村の中学校で演奏に使っている炭琴は一本の糸を張られた上に備長炭それぞれ 並べ、固定せずにマレットで叩いていたので、今回使う楽器も同じような設計をしま した。 ただ糸を使った場合、丸い備長炭が左右にコロコロ転び安定しないため、糸を使うの をやめ、くぼみを付けたスポンジを採用したのです。 ここで信じがたい出来事が起こりました。 吉川先生の豪快なマレットさばきに備長炭が台からはじき飛ばされてしまうではあり ませんか。 あまりにも予期せぬ出来事に、スタッフをはじめ私もびっくりあわててしまいました。 吉川先生自身も「この楽器ではいつ備長炭が落ちるか心配で思い切った演奏が出来な いよ。」との評価を受けてしまいました。 でも今更私にはどうすることも出来ず「先生、何とかこのまま続けてくれませんか。 」としか言いようがありませんでした。 このトラブルも製作時間の制限により、無理もないことだったのです。 録音本番直前にギリギリに間に合った炭琴は、吉川先生にとっては当日初めて手にさ れ、全く練習される時間もなく本番を迎えたわけで、本当になにが起こるか予測でき ない状況下であったからです。 こんな不測の状況下で吉川先生には大変な苦労と負担をかけ、申し訳なく思いました。 17:00この日の収録は一応終了したのだが満足できるものではなく、次回2日後3月 12日に持ち越すことになりました。

    翌日の3月11日、吉川先生の自宅に招かれ炭琴の修理を行うことになりました。 そうでもしなければ、このままの状態では先生自身にも負担をかけ満足のいくCDが完 成できないからです。 改良点についてはただ一つ、備長炭を台にうまく固定する事のみ。 ただそれぞれの備長炭を台に糸で巻き付けて固定してやれば済むことなのだが、これ をやってしまえば備長炭のクリアな音色が微妙に変化してしまうのです。 それを心配するあまり南部川村中学校では糸での固定はされていないのだ。 しかしプロと中学生ではマレットの力(スナップ)の入れ方がまるで違う。 (これが私の計算違いでした。) 多少の音の変化を犠牲にしてでも今回は吉川先生に安心してのびのび演奏していただ くよう、思い切って台に糸で固定する方法を選択する方法を選びました。 私は吉川先生の部屋に招かれ、半日かけ思い通りの修理を無事に終えることが出来き ました。 この日吉川先生も私の隣でマリンバの本番さながらの練習を続けられていました。

    3月12日今度はスタジオを三鷹に換え2回目の本番収録が行われました。 残された時間は今日1日、しかも17:00までに終えなければならないというプレッシ ャーを受けながら吉川先生は炭琴の前に立ちいよいよ本番演奏が始められました。 固定された炭琴を前に吉川先生の持つマレットは軽快に、またある時は豪快に備長炭 の上を優雅に舞い始めました。 その演奏は2日前の時よりも遥かにしのぐもので、わずか2日の間で炭琴を自分の細 胞の一つにしてしまった吉川先生の姿には改めてプロの音楽家のすごさを思い知らさ れました。 そして今初めて備長炭に命が吹き込まれる瞬間を目の当たりにし、この上ない感激と 感動が私の身体を掛け巡るのを感じました。 なんてすばらしい光景だったろう。 この瞬間を私は一生忘れない。 またこの瞬間を記録した炭琴CD「春のことぶれ」も私の記憶と共に永遠にこの世に残 るだろう。

    予定時刻17:00、無事に予定された全8曲の収録が終了しました。 この時吉川先生を始めスタッフ一同が感激の渦を巻き起こしました。 私自身も大きな仕事が完了した喜びと、地方の田舎者が東京で多くの方に囲まれすば らしい仕事を共に出来た喜びとが同時に込み上げ、感激の渦の中で皆と手を取り合っ て喜びを分かち合いました。 備長炭の里、紀州和歌山で生まれ、和歌山の子供たちに育てられてきた備長炭楽器「 炭琴」、地方に隠されていた宝が今まさに自然を愛するプロの音楽家「吉川雅夫」先生の手により、ここに開花させてくださいました。 このCDの完成により全く純粋である自然音楽が日本音楽に小さな投石になるよう、ま た一人でも多くの子供たちが音楽を愛し、地域産業に目を向けふるさとを心より純粋 に愛する「備長炭のようにクリアな人間」に育ってくれるよう、今後の世の中に変化 を与えてくれる一枚のCDとして役立つことを期待し胸膨らませます。 これが私が炭琴CDを作りたいと思った本当の答えです。 私達の夢の実現に協力してくださった皆さん本当にありがとうございました、本当に ご苦労さまでした。

    炭琴CD「春のことぶれ」ご紹介

    曲目
    1.紅梅絵巻 作曲:丸山和範
    2.チャルダッシュ  作曲:V.モンティ
    3.光の輪  作曲:森川隆之/編曲:丸山和範
    4.紀州は海の町  作曲:森川隆之/編曲:丸山和範/作詩:梅田恵以子
    5.春のことぶれ  作曲:森川隆之/編曲:丸山和範/作詩:梅田恵以子
    6.ユーモレスク  作曲:A.ドヴォルザーク/編曲:丸山和範
    7.おてもやん  編曲:丸山和範
    8.五木の子守歌  編曲:丸山和範

    奏者
    炭琴・・・・・・・・・・吉川 雅夫
    ソプラノ・・・・・・・・永野 薫
    パンフルート・・・・・・藤山 明
    ラテンパーカッション・・納見 義徳
    マリンバ・・・・・・・・野口 道子
    ヴァイオリン・・・・・・内田 輝
    ヴァイオリン・・・・・・宮内 道子
    ヴィオラ・・・・・・・・堀江 和生
    チェロ・・・・・・・・・嶺田 健
    ピアノ・・・・・・・・・ 丸山 和範

    松チャンのお話バックナンバーをみることができます。
    第1回・山を守る炭焼き職人
    第2回・備長炭の楽器ってしってますか?
    第3回・「炭琴CD 夢物語パート1」
    第4回・「炭琴CD 夢物語パート2」


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