松チャンコーナー

皆さん、こんにちは。私がこのホームページのご案内役の松本です。¢松チャン」と呼んでください。 これから私が、このコーナーで備長炭にまつわるオモシロ話、南部川のトピックスなど、いろんな話をしてまいりますので乞うご期待下さい。あっ、それから、ご意見ご感想、お叱りからファンレターまでなんでも歓迎します。どしどしお寄せください、ネ。
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松チャンのお話
  • 第4回/ 「炭琴CD夢物語パート2」

    ここでマリンバ奏者「吉川雅夫先生」を紹介します。

    吉川雅夫(よしかわまさお)
    昭和9年12月13日生まれ
    昭和28年愛知県立明和高校音楽課程ピアノ課卒業
    昭和35年武蔵野音楽大学ピアノ課卒業
    現在フリーのマリンバ奏者としてスクール・コンサートを基盤として各方面にて演奏 活動をしている。
    またスタジオミュージシャンとして演奏活動をする。
    他にも日本木琴協会理事 日本木琴協会東海支部長 東京マリンバ・トリオ主幹 読 売文化センター講師を在任している。

    吉川先生との出会いが私たちの夢を決定づけてくれたと言っても過言ではないでしょう。 山村で生まれた超原始的な楽器、またとんでもなく扱いにくい楽器の演奏を快く引き 受けてくださった吉川先生に今あらためて感謝します。
    「夢をかなえてくれてありがとうございました。」

     次に夢の炭琴CDが完成するまでの幾多の出来事を紹介しましょう。
    それは全てが苦難の連続でした。
    先ず全ての作業において障害となったことは、製作期間4ヶ月という問題でした。 なぜ製作期限が短く定められたかというと、村から製作費用として補助金を頂くよう にしていたからです。

    補助金導入については我々のように地方の貧しい森林組合にとっては資金が無いため やむ終えない選択でした。
    最終期限は平成8年3月31日、我々に与えられた期間は僅か4カ月間のみ、どうか んがえても実行不可能な状況下で、我々は夢の世界への冒険が始まりました。
     平成8年11月より地元南部川村備長炭生産者「勝股文夫さん」「平山幸夫さん」 「森口勝さん」の3人に炭琴の原料となる”とびきり”上等の備長炭を焼いていただ くよう依頼しました。 とはいっても直ぐに上等の備長炭がたくさん出来るはずがありません。 一窯焼いて約450キロの備長炭が出来るのですが、その内使えそうなものが僅かに 1割弱。

    2カ月ほどかかり少しつづ集めた備長炭を、平成8年2月5日和歌山大学教育学部、 森川隆之教授の元へ運ばせていただきました。
    そこでは先生のとぎすまされた音感により、楽器として使えるものだけを選別してい ただいたのです。
    森川先生も当初、初めて耳にする備長炭の透き通るほどクリアな音質に驚かれ、興味 を抱いてくれましたが、反面「プロの目から見てこれを楽器にするのは相当困難だよ 。また3オクターブ半音付き37本の備長炭を使った1台の楽器を作るには少なくと も3カ月はかかるね。」とズバリ現実的意見を言われてしまいました。 ショックでした。 3月完成予定が5月以降になってしまうのか。 しかし我々はなんとしてでも2月中に楽器を完成させ1日も早く東京の吉川先生の元 へ送らなければならない使命がある。 とにかく出来るだけのことはやろう。 心の中で不安と迷いを打ち消し全力を出し切ること。 何度もそう自分に言い聞かせました。

    森川先生に運んだ数十本の備長炭は、選別してもらう間に次々と姿を消していきました。 なぜなら、そのほとんどが使いものにならないのです。 これには側でみていた私もショックでした。
    見掛けは綺麗なものでも叩いてみると和音が出ずにバイ音になってしまうのです。 (2つ以上の違った音が一度に出てしまう。) また炭の叩く場所によって違う音が出るのです。 これら予想外の現象に「備長炭てどこまでやっかいな奴何だろう」と正直失望しました。
    でも備長炭が悪いのではありません。 今まで燃料として使われていたものを無理に楽器にしようと考え出した私たちが悪い のです。

    その後20日ほどかけ最終400本の備長炭を森川先生の元へつぎ込み、苦闘の末正 式な楽器用備長炭が揃いました。 森川隆之先生、忙しい中ご協力いただきありがとうございました。 また先生の研究室、灰と炭で真っ黒に汚してしまいスミませんでした。

     次に待っていたのは最も難しい備長炭の調律作業でした。 地元にはプロの調律士がいないため実際どうしたら良いか迷いましたが、そこで私等 を救ってくれたのが3年前大阪より引っ越してこわられ現在南部川村で独立して備長 炭を生産されている熊野勉さんの奥さん、熊野たづこさんの存在でした。 熊野さんは「私で間に合うことが出来れば」と快く協力に合意してくれました。 この方は趣味で長らくバイオリンをやっておられ音感は抜群。 しかも炭の扱いには慣れているためプロの調律士よりはるかに適任者でした。

    とはいっても調律作業は非常に困難な作業です。
    第一鉄のように堅い備長炭はノコギリでは切断出来ないため、特殊ダイヤモンドカッ ターを用いなければなりませんでした。 熊野さんの話によれば最も難しかった点は低音部分の調整だったそうです。 とにかく金属音のする備長炭から低音の出るものを探し出すことは、備長炭の性質か らして無理に等しい問題でした。 この部分においては多少問題点を残しましたが、熊野さんの絶大な協力のもと2月末 で立派な炭琴が完成したのです。 熊野さん、3ヶ月もかかる仕事を見事1ヶ月で仕上げてくださり本当にありがとう。

     ここまで出来ても全体の作業はまだ終えてはいません。 備長炭を据え付ける専用台がいるのでした。
    製作には私の伯父でもあり、また現在南部町なかよし作業所長を務められている石山 卓男さんにご協力していただきました。 3月2日より日曜大工センターに行き材料の買い出しからいよいよ作業が始まる。 完成までには3日を要し、木製の立派な炭琴専用台が完成しました。 この炭琴専用台には石山さんのアイディアがふんだんに取り入れられ、1.音がより いっそう共鳴するよう底板のついた箱型台 2.移動に便利な分解型台 3.炭の固 定に音を狂わす糸の使用をやめスポンジが使用されました。

    完成した音階の合わせた備長炭と専用台は、吉川先生の待つ東京に向け3月6日備長 炭の里、和歌山県南部川村を旅立ちました。 録音本番予定日は3月11日、僅かに5日前の出来事でした。 録音予定日には間に合わせたとはいえ、吉川先生には初めて手にする備長炭楽器「炭 琴」、練習時間がないのだ。
    吉川先生、ごめんねぇ。

    ●次回は炭琴シリーズ最終回 「東京での録音本番、備長炭楽器炭琴、命吹き込まれる」です。 ハプニングはまだまだ続くよ。

    松チャンのお話バックナンバーをみることができます。
    第1回・山を守る炭焼き職人
    第2回・備長炭の楽器ってしってますか?
    第3回・「炭琴CD 夢物語パート1」

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