続・夜のソムリエ
--- 第三話 マリアージュ(四) ---

むずかしいのね」

「いえ、慣れたら簡単ですわ」

二人は揃って小首をかしげるようにして、それぞれのオードブルを口に入れ、田中に言われたように鼻から息を大きくはきだすと、顔を見合わせて同時に、

「すごーい!」

と歓声をあげ、田中の方を向いてウィンクを送ってきた。

「感じましたか?感度のいい人は感じやすいんですわ」

「じゃ、わたしたちは感度いいってわけね」

「そういうことですわ。もうバッチリですわ。今のが白ワインのマリアージュ。赤ワインのはまた違うんですわ」

「おもしろーい!」

同時にまた二人がハーモニーを奏でたところにドアが開いて客が入ってきた。

田中は振り向きざま、相手の顔を見て固まってしまった。

「ハーイ!ウタマーロ!」

「マ、マリマンヌ!」

マリアンヌは駆け寄ってくるとカウンターの中に入ってきて田中に飛びつき田中の口にキスした。

「久しぶりです、ウタマーロ」

「ちょ、ちょっと待て、マリアンヌ!ど、どないしたんや!い、いつ来たんや!」

「今、着いたとこです。空港からタクシーで真っ直ぐ来ました」

「これ、カトリーヌとミッシェルとわたしからの贈り物です。乾杯しましょう!」

「ちょ、ちょっと待て。お客さんがおるやないか、ここは店なんや」

田中の言うことなどそっちのけで、マリアンヌは手土産のアルマニャックを開け、グラスに注ぎ乾杯の準備に取りかかる。

カウンターに並べた五つのグラスのうち二つを取り上げると、一つを田中に持たせ自分のグラスをそれに合わせた。グラスはチーンとクリスタル独特の音を立て、マリアンヌは一気にそのブランデーを飲み干した。

「さー、皆で乾杯しましょう!」

マリアンヌは、自分のグラスにもう一度なみなみとブランデーを注ぐと、カウンター越しに二人の客と仁美ちゃんにグラスを渡した。