むずかしいのね」
「いえ、慣れたら簡単ですわ」
二人は揃って小首をかしげるようにして、それぞれのオードブルを口に入れ、田中に言われたように鼻から息を大きくはきだすと、顔を見合わせて同時に、
「すごーい!」
と歓声をあげ、田中の方を向いてウィンクを送ってきた。
「感じましたか?感度のいい人は感じやすいんですわ」
「じゃ、わたしたちは感度いいってわけね」
「そういうことですわ。もうバッチリですわ。今のが白ワインのマリアージュ。赤ワインのはまた違うんですわ」
「おもしろーい!」
同時にまた二人がハーモニーを奏でたところにドアが開いて客が入ってきた。
田中は振り向きざま、相手の顔を見て固まってしまった。
「ハーイ!ウタマーロ!」
「マ、マリマンヌ!」
マリアンヌは駆け寄ってくるとカウンターの中に入ってきて田中に飛びつき田中の口にキスした。
「久しぶりです、ウタマーロ」
「ちょ、ちょっと待て、マリアンヌ!ど、どないしたんや!い、いつ来たんや!」
「今、着いたとこです。空港からタクシーで真っ直ぐ来ました」
「これ、カトリーヌとミッシェルとわたしからの贈り物です。乾杯しましょう!」
「ちょ、ちょっと待て。お客さんがおるやないか、ここは店なんや」
田中の言うことなどそっちのけで、マリアンヌは手土産のアルマニャックを開け、グラスに注ぎ乾杯の準備に取りかかる。
カウンターに並べた五つのグラスのうち二つを取り上げると、一つを田中に持たせ自分のグラスをそれに合わせた。グラスはチーンとクリスタル独特の音を立て、マリアンヌは一気にそのブランデーを飲み干した。
「さー、皆で乾杯しましょう!」
マリアンヌは、自分のグラスにもう一度なみなみとブランデーを注ぐと、カウンター越しに二人の客と仁美ちゃんにグラスを渡した。
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