| 「おやおや楽しそうですねー、わたしも入れてもらえますでしょうか?」
田中はその声に飛び起き、
「あっ、すんません。いらっしゃいませ!」
「ほほー、しっかりやってらっしゃるじゃありませんか」
「おや、これはどうも」
田中の動きに合わせるように全員が起き上がってカウンターに座り直し、仁美ちゃんもカウンターの中に入ると今まで何事もなかったかのように店内は静まり返った。
「お久しぶりです、先生」
「こちらこそ。昨日はオペで来られなかったもんですから。面白い事を始められたということは聞いておりましたので早速と思っておりましたんですが」
「いやー、お越しいただけるだけでありがたいことですわ」
「ウタマーロ、だれですかこの方は?紹介してください」
「ああ、マリアンヌ、こちらはドクター川村や。脳外科の先生なんやけど、マリアージュの方が専門の先生なんや」
「マリアージュ!結婚のプロですか?」
「違うがなマリアンヌ、ワインと食べ物の相乗効果のことやがな」
「おー、そうですか、マリアージュですか」
「そうや、強烈やで、この先生のやらはることは」
田中がそういいながらドクターの方を見ると、
「いやいや、大したことありません。まだまだ究極のマリアージュには至ってません。次はやっぱり私、脳味噌にこだわってみようかと思うのです」
と、まじめな顔で全員を細い目で眺め回す。ドクターとも三年振りになるのだが、相変わらずの好奇心と下手物趣味に変わりはなく、ますますその度合いを増しているように見受けられた。
「こんばんはー」
また入り口で声があった。 見ると、パリっとしたスーツに身を固めた味覚寺の住職だった。
「いやー、またおもろいこと始めはったんですなー、おや、こちらのきれいどころはどなたはんですか?」
その声が終わる前にマリアンヌが立ちあがって住職の方に歩み寄った。
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