「わたし、マリアンヌ。ウタマーロはわたしのアミです」
「アミいうたら、阿弥陀さんいうことかいな?」
「おいおいマリアンヌ、勝手なこというたらあかんで。ご住職、彼女はフランス研修のときのアシスタントを務めてくれたんですわ」
「ノン!、ウタマーロはわたしのアミです」
「あのなー、まぎらわしいやっちゃなー、ほんまに」
田中が住職に説明するのを無視してマリアンヌはいつのまにかカウンターの中に入り、田中の首に両手を回してぶら下がっている。 仁美ちゃん、二人の女性客、ドクター、住職が呆れ顔で見つめる中、マリアンヌは臆する様子もなく田中の唇をねだるように田中の瞳の奥を見つめるのだった。
「いやー、結構ですなー田中さん、フランスから追いかけてきたんでしょ、このマドモアゼルは。一期一会を大切にしなければいけません。あなたがフランスでなさったことの結果が今我々の眼前で展開されているにすぎないのですから。いやー、うらやましい限りです」
と、ドクターは一瞬舌なめずりするような表情でマリアンヌと田中の顔を交互に眺め、
「麻子はんがおらんでよろしおましたなー」
と、住職には釘を刺すような口調で追い討ちをかけられる。
「皆さん、それは誤解いうもんです。ラテン系はどうも感情移入がはげしすぎるんですわ」
田中がいくら事情を説明しても客たちは全く聞く耳を持たないようで、もと宝塚の二人まで、
「わたしたちは何ともありませんわ。お幸せそうでいいんじゃないでしょうか」
と、無責任な発言をする。そのとき、
「皆さん、席についてください!ここはワインパブです、ワインを飲みましょう!」
という大声が店内に響き渡った。気づくと、仁美ちゃんが肩で息をしながら両手を腰にあて、全員を睨み付けている。 その声にマリアンヌも驚いたように仁美ちゃんの方を振り向いて、仁美ちゃんに負けず劣らぬ大声で、
「おー、恐ろしい。あなた、一体だれですか?ウタマーロ、このひとウタマーロのアミなんですか?」
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